パリやミラノの現地取材で見いだした2026-27年秋冬シーズンのメンズトレンドを紹介。
2026-27年秋冬シーズンのランウェイで際立っていたのは、装いの先に浮かび上がるユニークな人物像である。詩人や作家、学生、旅人──ブランドごとに描かれるキャラクターは異なれど、共通していたのは知性や経験、そしてパーソナルなストーリーを感じさせるムードだ。ウエアには、時間と共に育まれる愛着を加工で施し、アクセサリーにはキャラクターを形づくる多彩なディテールを加えた。
一方で、多様化するライフスタイルや気候変動に対するメッセージも強まり、機能性を備えた提案も増えた。実用性とロマンティシズム、伝統と革新。その両極を往復するトレンドキーワードから、2026-27年秋冬メンズファッションを読み解く。
【秋冬トレンド1】ポエット・コア
ドリス ヴァン ノッテン2026-27年秋冬メンズ・コレクション
今季を象徴する人物像があるとすれば、それは詩人や作家だろう。ピンタレストが“ポエット・コア”と名付けたこの潮流は、文学や芸術を愛する知的で内省的な人物像を軸にしたスタイルを指す。ランウェイでは、帽子を深く被り、手をポケットへ差し込み、どこか憂いを帯びた佇まいを見せる男性が多数登場した。
学生服のノスタルジーを差し込んだドリス ヴァン ノッテンや退廃的な美学のヨウジヤマモト、ルメールとルイ・ヴィトン、ゼニアは旅と文学を想起させるエレガンスを提示する。教養を感じさせるスタイルが支持を集める今、ポエット・コアは新たな男性像の指標となりそうだ。

ヨウジヤマモト2026-27年秋冬メンズ・コレクション

ルイ・ヴィトン2026-27年秋冬メンズ・コレクション

オーラリー2026-27年秋冬コレクション
時間の蓄積を刻んだ衣服に価値を見出す感覚が広がっている。クラシカルで普遍的なアイテムに経年変化やダメージ加工、色あせたような風合いを通じて、“時間”をデザインへ取り込む提案が目立った。プラダはコーヒー染みを装飾としてあしらったシャツを披露し、ベーシックアイテムを基盤とするシュタインやオーラリーは素材の豊かな表情でスタイルに奥行きをプラス。ジュンヤ ワタナベ マンも正装の文脈を現代的に再構築する。まるで、衣服はただ消費されていくものではなく、着る人の人生を映し出す存在へと変化していくべきだというデザイナーたちのメッセージのようだ。

プラダ2026-27年秋冬メンズ・コレクション

ジュンヤ ワタナベ マン2026-27年秋冬メンズ・コレクション

ドリス ヴァン ノッテン2026-27年秋冬メンズ・コレクション
ニットウエアは今季の主役級カテゴリーの一つ。ただし、求められているのはテクニカルな機能性ではなく、どこか懐かしさを感じさせる温もりである。肉厚なプルオーバーやケーブルニット、フェアアイル柄など、記憶の中の冬を思い起こさせる意匠が再評価されている。ノスタルジーがテーマのドリス ヴァン ノッテンに加え、ラルフ ローレンやポール・スミス、マルニもコレクションに差し込んだ。“ポエット・コア”にもリンクする、文学や知性、過去の時代への憧れを反映したスタイルである。

ラルフ ローレン2026-27年秋冬メンズ・コレクション

ポール スミス2026-27年秋冬メンズ・コレクション

ディオール2026-27年秋冬メンズ・コレクション
クラシカルなチェック柄が本格的な復権を果たした。なかでも存在感を放ったのがタータンチェックである。例えば、装飾によって新たな解釈を提示したディオールとカラー。さらに、ブリオーニのようにアウターにも用いられ、エルメスはニットウエアにレザーでモチーフを、ルイ・ヴィトンはセットアップに取り入れるなど、その応用範囲は広い。かつてのプレッピースタイルを連想させる柄でありながら、今季はより都会的で洗練された印象だ。

カラー2026-27年秋冬メンズ・コレクション

エルメス2026-27年秋冬メンズ・コレクション

プラダ2026-27年秋冬メンズ・コレクション
メンズでは普遍的なテーラリングでは、“ウエスト”が重要なキーワードに再浮上。ここ数年のボックスシルエットや誇張されたショルダーから転換するように、ジャケットやコートは身体に沿った立体的なフォルムへと変化している。ヨークやプラダ、ディオールでは、シングル・ダブルを問わず、ウエストを絞り込んだ洗練されたシルエットが多数登場。ヘド メイナーやジュンヤ ワタナベ マンも独自のバランスでこの流れに呼応している。自然な身体性を引き立てるテーラリングには、成熟した男性像を映し出す新しいエレガンスがある。

ヘド メイナー2026-27年秋冬コレクション

ジュンヤ ワタナベ マン2026-27年秋冬メンズ・コレクション

セッチュウ2026-27年秋冬メンズ・コレクション
気候変動が常態化する昨今、機能性はもはやタウンユースにも必須な時代になりつつある。今季はレインジャケットやフード付きトレンチコート、防水性を意識したマックコートなど、天候への対応力を備えたアウターが目立った。アイム メンは独自のパターン技術による機能服を提案し、プラダは都市生活とアウトドアの境界を曖昧にするユーティリティウエアを披露。エルメスやセッチュウも洗練された機能美を提示した。実用性を追求しながらも、美しさを犠牲にしないことこそが、現代のラグジュアリーに求められている条件であり、ウェザープルーフはその象徴といえる。

エルメス2026-27年秋冬メンズ・コレクション

プラダ2026-27年秋冬メンズ・コレクション

ディオール2026-27年秋冬メンズ・コレクション
オーバーサイズ全盛の時代を経て、ランウェイのシルエットは再びシャープな方向へと向かっている。象徴的だったのは、貴族的なエレガンスとロックスピリットを融合させたディオールのスキニージーンズだ。ドリス ヴァン ノッテンやプラダでは、身体のラインに沿うロング&リーンなアウターも存在感を放った。2000年代のスキニーブームの再来というよりも、長く続いたオーバーサイズ全盛への揺り戻しと捉えるべきだろう。ただし、一般的には依然としてリラックスシルエットが主流だ。どこまで浸透するかは未知数だが、変化を象徴する兆しであることは間違いない。

ドリス ヴァン ノッテン2026-27年秋冬メンズ・コレクション

プラダ2026-27年秋冬メンズ・コレクション

ダブレット2026-27年秋冬メンズ・コレクション
スポーツウエアやルームウエアの文脈で語られてきたトラックスーツが、本格的にファッションへと復帰した。ダブレットとウィリー チャバリアのほかに、アミ パリスとルイ・ヴィトンの、パンツの裾をソックスにインしたスタイルは簡単に取り入れられそうだ。白いソックスだと野暮ったく見える可能性もあるので、同系色のソックスを合わせるのがおすすめ。かつてのラグジュアリーストリートを思わせる潮流とは異なり、今季のトラックスーツはよりスポーティーで快活な印象だ。テーラリングやクラシック回帰が進む一方で、こうしたリラックス感のあるアイテムが共存していることも今季らしい特徴である。

ウィリー チャバリア2026-27年秋冬メンズ・コレクション

アミ パリス2026-27年秋冬メンズ・コレクション

ゼニア2026-27年秋冬メンズ・コレクション
“ポエット・コア”を象徴するアクセサリーとして目を引いたのがメガネだ。ルメールやソウシオオツキ、ゼニアはレトロなメタルフレームを、メゾン ミハラヤスヒロとドリス ヴァン ノッテンは個性的なラウンド型を採用した。まるで図書館で古書を読みふける研究者のような知的さが特徴で、知性や個性を表現するためのツールとして機能している。小さなアクセサリーながら、時代の空気を雄弁に物語るアクセサリーである。

ミハラヤスヒロ2026-27年秋冬メンズ・コレクション

ドリス ヴァン ノッテン2026-27年秋冬メンズ・コレクション

ルイ・ヴィトン2026-27年秋冬メンズ・コレクション
ショーツは夏だけのアイテムではなくなった。今季は膝下まで届くバミューダショーツが秋冬仕様へと進化し、多くのブランドが提案している。ランウェイに登場したのは、ルイ・ヴィトンとコム デ ギャルソン・オム プリュスのスーツ地や、ディオールのデニム、タークのレザーなど多彩な素材。長いソックスやブーツとの組み合わせによって冬らしいバランスを生み出し、従来のパンツスタイルにはない軽快さを演出する。冬のワードローブの固定観念を揺さぶるアイテムとして注目したい。

コム デ ギャルソン・オム プリュス2026-27年秋冬メンズ・コレクション

ディオール2026-27年秋冬メンズ・コレクション

ベッドフォード2026-27年秋冬コレクション
注目の素材は、思わず触れたくなるような、柔らかく温もりのあるテクスチャーだ。ドルチェ&ガッバーナのファーに見立てたニットや、ベッドフォードのベルベット、ダブレットの二酸化炭素から作る糸で煙のようなモチーフのフォーファーなど、ふっくらとした質感のアイテムが登場した。
装いに視覚的な温かみを添え、どこか心までほっとするような質感がノスタルジックなムードを後押しする。機能性に加え、触覚に訴えかける心地良さも、今季のスタイルを語る上で欠かせない要素である。

ドルチェ&ガッバーナ2026-27年秋冬メンズ・コレクション

ダブレット2026-27年秋冬コレクション

ディオール2026-27年秋冬メンズ・コレクション
ランウェイショーでは、大型バッグの提案が続いている。中でも今季を象徴するのが、大きめのメッセンジャーバッグだ。ドリス ヴァン ノッテンやディオール、ルイ・ヴィトンでは、実用性とデザイン性を兼ね備えたモデルが登場。ノートパソコンや書類を収納できる容量を備えながら、スタイリングの一部として成立する存在感も持ち合わせている。
“ポエット・コア”の文脈で言えば、原稿や本を持ち歩く作家の鞄にも見える。機能性への関心が高まる今季において、バッグは単なる収納道具ではなく、ライフスタイルを映し出すアクセサリーへと進化している。

ルイ・ヴィトン2026-27年秋冬メンズ・コレクション

ドリス ヴァン ノッテン2026-27年秋冬メンズ・コレクション

アミ パリス2026-27年秋冬コレクション
今季は冬のワードローブに新鮮な緊張感をもたらす、鮮烈な赤がキーカラーとして浮上した。ボルドーやピンクが主流だった近年とは異なり、今季はより原色に近いエネルギッシュな赤へと移行している。
オーラリーやアミ パリス、エゴンラボは洗練された差し色として取り入れ、3パラディは大胆なフルルックで提案。プラダやルイ・ヴィトンでは、ダークトーンのアクセントとして刺激を添える。グレーやブラウン、ブラックを中心とする秋冬らしい落ち着いたカラーパレットに一点投入するだけで、旬のムードが完成する。

オーラリー2026-27年秋冬コレクション

エゴンラボ2026-27年秋冬コレクション

ジョルジオ アルマーニ2026-27年秋冬メンズ・コレクション
ネクタイは完全に復権を遂げたが、従来のビジネススタイルの延長線上ではなく、ファッションアクセサリーとして定着しつつある。シャツの見返しをネクタイのように見立てたソウシオオツキや、トレンドセッターであるドリス ヴァン ノッテンをはじめ、ワークウエアやミリタリーのスタイルと合わせたジョルジオ アルマーニ、シフォン素材のスカーフのようなサカイなど、多彩なアプローチが見られた。
また、多くのブランドが細身のネクタイを採用し、時にはパンツの中へ半ば隠すようなスタイリングも。かつては権威の象徴でもあったネクタイは、個性を表現する重要なディテールとなっている。

ソウシオオツキ2026-27年秋冬コレクション

サカイ2026-27年秋冬メンズ・コレクション

オーラリー2026-27年秋冬コレクション

オーラリー2026-27年秋冬コレクション
足元では、クラシックなレザーシューズがトレンドをけん引している。以前トレンドだった厚底ローファーの反動か、スニーカーの流行と同様に薄手、ロープロファイルのスリムなローファーが今は主流だ。ロロ・ピアーナやアクネ ストゥディオズ、トッズ、オーラリーなど、ラグジュアリーからコンテンポラリーまで多くのブランドがそれぞれの解釈で提案。ひもを結ぶ必要のない気軽さと、テーラリングにもなじむ上品さを兼ね備えている。
“ポエット・コア”の知的なスタイルとも好相性で、少し使い込まれたレザーの風合いも今季のムード。クラシック回帰を象徴するシューズでありながら、現代的な軽やかさも備えた一足として注目したい。
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